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​お知らせ

家元のよみもの Vol.11 宿命、運命、天命、使命


庭木の新芽が目に優しく映る季節、皆様いかがお過ごしですか。


この度は投稿が遅れましたこと、お詫びいたします。


今回は、あることから宿命と運命について、考えさせられました。



私は華道家元として生きておりますが、これは宿命であり、また、偶然にも天職だったと心から感謝しています。なぜならば、デジタルな今の時代、会社でのお勤めは間違いなくこなすことができないと思うから…(笑)


もちろん、今の職業で生きる上でもデジタルな部分が入って来てはいます。

その都度いろいろな方に助けられながらこなしている状況ではありますが、「花を生ける」という行為自体はまだアナログに属するのか、これ以上楽しいことはない!と思いながら自身の創作活動、会員への指導に当たっています。



宿命とは、前世から定まっている運命のこと、

運命とは、人間の意志に関係なく巡ってくる幸、不幸のこと、とあります。

宿命は変えられませんが、運命は自分の意志で変えていくことができると説明されています。


とても私的なお話になりますが、私の伯父がつい先日、転倒し側溝に落ちてしまい、急性硬膜下血腫を起こしてしまいました。


日頃からふらつく、物忘れがひどくなった、と嘆いていたのですが、それは慢性硬膜下血腫があったから、ということが今回の転倒によりわかりました。

ちなみに彼は95歳!ですから、ふらつきも物忘れも年齢故と、私もあまり気に留めておりませんでした。


原因がこのようなところにあったのか…


伯父は間も無く、福島から横浜に移住することになっていました。妻が亡くなった後は、1人で福島のケアハウスで暮らしておりましたが、仲の良かったお友達も旅立ち、寂しい思いをしていたようです。本人はいたって元気なのですが、このまま離れているのは悲しいと、私は思うようになりました。



福島には東北家元教場がありますので、コロナ前は毎月数日間滞在し、福島、山形、盛岡の会員がお稽古に通っておりました。その折りには必ず伯父に会い、食事をしたり、おしゃべりしたりと楽しいひとときを過ごしていました。



福島の風景
福島市内にある、旧日本銀行支店長宅であった御倉邸のお庭からは、阿武隈川が見渡せます


福島の教場は、これまで、伯父がお庭の手入れや風通し、その他いろいろと手伝ってくれていました。けれども、残念なことに、維持が難しくなり、その他の理由も重なり、昨年手放しました。そのため、なかなか福島へ行く機会がなくなっていました。


そこで、思い切って、伯父に私の自宅近くにある老人ホームへ移住してもらい、横浜で暮らすことに皆で決めました。


伯父は「長く生きすぎた」と常々口にしますが、人間には寿命があるのだな、と思います。

側溝に落ちてそのままだったら、手遅れになったかもしれません。たまたま通りかかった方に助けていただき、命拾いしました。さらには、もし転ばなかったら、慢性硬膜下血腫が発見できず、認知症になってしまっていたかもしれません。


今回のことは、本人の意志とは関係なく偶然が重なり、命を繋ぎました。運命なのでしょう。

伯父にもう少し今世を生きるように、との神様からのお告げのように思いました。

となると、天命かもしれません。



伯父が毎日足を運んでくれた、2018年秋の福島支部の記念展より



人生100年時代と言われています。


元気に100歳まで生きられたら本当に幸せなことです。

けれども、いつどんなことが起こるかわからない日々を私達は生きています。

その日その日、その瞬間を大切に過ごさなければいけないと、改めて感じています。


私はこの仕事を宿命と思っています。神様によって与えられた果たすべき役割を、天命と思って自分の人生をかけてやり遂げたい。

そして自分の命が尽きるまで、目標に向かって使命を果たしたい。

それが今の私の願いです。



ちょっと大袈裟な書き方になってしまいましたが、50歳を過ぎてから、これまで生きて来た道を振り返り、これからの自分にできること、しなければならないこと、この私という人間に生まれたことの意味を自分で理解したい、そんな思いが湧き起こってくるのです。


日々何気なく起こっているとこは、全て必然であり、決められていることと、自分の意志で決断しなければならないことの繰り返しです。


生きることは本当に大変だと思う今日この頃です。けれども、寒がりの伯父が暖かな横浜で、趣味の囲碁や妹である母と過ごす時間をもてるように、良い流れを作ることが今の私の使命と信じたいのです。



うまくいかないことも多々起こりますが、

流れを上手に受け入れて、日々を健やかに生きていきたいものですね。



来月は三千院の御懺法講のお話をしたいと思います。


梶井宮御流

第二十一世家元 

一松斎 藤原素朝

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