家元のよみもの Vol.23 家元継承二十一周年記念展 with 神奈川大学華道部
- kajiinomiyagoryusn
- 7 日前
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深緑の美しい季節となりました。みなさま、いかがお過ごしですか?
4月の一ヶ月、思い出すだけで目眩がしそうなほど忙しい日々でした。けれども、今はもう、それらのことは懐かしい思い出となっています。
4月18日と19日、私にとって家元継承の節目となる記念展を開催しました。『梶井宮御流第二十一世家元一松齋藤原素朝 家元継承襲名21周年記念展(イベント記事)』と題し、神奈川大学のみなとみらいキャンパスに於いて、私が指導する華道部主催の下、開催しました。
なぜ21周年を選んだかと言いますと、私が第二十一世家元だからです。本来なら区切りの良い20周年にすべきところをあえて21周年に個展を開こうと思っておりました。21という数字にこだわり、ずいぶん長い間、会場を探しておりましたが、なかなかピンとくる場が見つからずにいました。しかしある時、神奈川大学の新しいキャンパスが建つエリアが、みなとみらい21地区であることに気づいたのです。ここで開催できたらこれまでにない展覧会ができるかもしれないと思い立ちました。
早速、華道部の顧問の先生に相談すると、このキャンパスは2021年にできあがり、そして、なんと21階建てというではありませんか!こんなに21が揃うとは、もう偶然とは思えません。会場が決まると、ぼんやりとしたイメージが、次第に明確になっていきました。
華道部の学生達に相談すると、やりましょう!と即答。私の21周年を華道部としてお祝いしてくれることになり、華道部主催でキャンパス1階の会場を借りる運びとなりました。それならば個展として開催するよりも、次の世代を担う学生達と一緒になって花を生け、記念展を催したいという気持ちが強くなりました。
記念展に参加してほしい旨を伝えると、このような機会はめったにあるものではない、と学生達はすぐさま参加を快諾してくれました。それから、お稽古へ行くたびに会場を眺め、どう作品を配置するかをイメージしました。作品数はもちろん21作!広いのでどこにでも置けそうですが、かなり制約があり、ギリギリまで配置には悩みました。私が14作、学生個人作6作と参加者全員の合作と、OB合作で、計21作品としました。
当流の特徴ある古典花、その中でも、私が得意としている富士山は絶対に生けなくてはと思いました。生け込みの前日、1日かけて生けあげました。今回は『遠見の富士』を選びました。どの枝を富士にするかで近くに見えるのか遠くに見えるのかを表現します。その他にもいろいろな富士がありますが、この『遠見の富士』と『近景の富士』をしばしば私は生けます。これは立派に仕上がってホッとしましたが、これからがまた大変なのです。この生けあげた作品をまた器から外して、現場で生け直すのです。一度仕上がったらサッとできるでしょう、と思われるかもしれませんが、それがそうはいかないのです。ですから、いつもこのまま運びたいと思うのですが、それは叶いません。工夫をして、できるだけ枝に負担がかからないようにして運びます。これは、経験しなければわからない緊張だと思います。
結果、今回も無事に金屏風の前に再現することができました。下生けをした古典花を移動させるのはハラハラドキドキの連続です。さらに、花材の調達をしながらこれで足りるだろうか、この取り合わせで良いだろうか、と思い巡らすときもハラハラドキドキします。21年経っても変わることない緊張です。

今回も生け込み当日の朝まで花材を知人宅にいただきに走りました。けれども、いつも、思いがけない素晴らしい材料が手に入ったり、届いたりします。今回も正にそうでした。ご協力下さる皆々様に心から感謝です。
しかしながらこのハラハラドキドキは、いざ生け込みが始まると消えていきます。予定していた取り合わせとは違うことになろうとも、それぞれが次第にベストな場におさまっていくのです。自分でもそれがなぜかわからないのですが、まるで何かに導かれるように…。
ただし、今回は、これまでにない、花が萎れるというアクシデントが起こり、私の気持ちも萎れそうになる瞬間がありました。西陽があたり、会場内がかなり暑くなることは想定していたのですが、嫌な予感が当たってしまいました。しかし、その思いを吹き飛ばすかのように、学生の合作が素晴らしくできあがり誇らしく思っています。
神奈川大学のスクールカラーがプラウドブルーであることを知り、青いマッスの作品に仕上げたらどうかと提案しました。普段のお稽古の作品とは全く違う、大作の合作ですから、もちろん、アドバイスが必要となります。ところが、学生達は、私が口頭で説明しただけで、私のイメージ以上の作品を創り上げてくれました。そして普段のお稽古ではすることのない、一つの作品をみんなで創り上げることの楽しさを知ったようです。ただし、500本のデルフィニュームの下処理には、学生達も先が見えずに黙々と作業しながら途方に暮れたかもしれません(笑)

4年生は個人作も出品しました。秋に開催される、横浜華道協会新進作家展へ参加予定の学生達です。意欲があり、心から華道を楽しんでいる学生との触れ合いは、華道の明るい未来と希望を私に抱かせてくれるものとなりました。
また、この華道部創設時のOBOG達も駆けつけてくれ、合作を出品してくれました。会期中もあれこれと手伝ってくれ、心強いことでした。卒業してもこうして繋がっていてくれること、こんなに嬉しいことはありません。
今回は、学生達がそれぞれに分担して記念展開催の為に動いてくれました。当日も多くの学生が会場で手伝ってくれました。終わってみれば、いろいろと反省点はありますが、本当にこれまでにない心に残る記念展となりました。
ご来場いただきました皆様にはこの場をお借りして心より御礼申し上げます。
梶井宮御流
第二十一世家元
一松斎 藤原素朝

